メーデー、メーデー、メーデー。
『生きる事は素晴らしい事。命を粗末にしてはいけない』親からも学校でもそう教わってきた。その事に疑問を持った事もなかった。だって、世間ではそれが自然で当然の考え方だから。だから、それについて『どうして?』と問われると、どうしてなのか分からない。
「…木南先生、今日の木南先生の質問の返事は宿題にさせてください。ちゃんと答えを探してきますから」
咄嗟に思いついた『宿題』という言葉を口にした自分を天才だと思った。考える時間稼ぎが出来る、なんて便利なワードなんだ。と、自画自賛しながら、
「オレ、仕事に戻ります」
逃げる様に木南先生の病室を退散。木南先生の事だから長居をすると『いつまでに提出してください』などと期限を決め兼ねない。
「…何で生きるのか。かぁ」
あまりにも深すぎる問題に頭を掻き毟りながら医局に戻った。