メーデー、メーデー、メーデー。

 「こんなに苦しいのに、こんなに辛いのに、どうして生きなければいけないの? どうして死んではいけないの? 生きる事は正しくて、死ぬ事は間違いなの?」

 さっきまで黙っていたくせに、壊れた水道管の水の様に、次から次へと疑問を投げかけてくる木南先生。

 「……」

 簡単ではない木南先生の質問に、戸惑い、言葉が出てこない。

 何か言わなければ。木南先生に言い負けてはいけない。木南先生の死を良しとするわけには絶対にいかない。

 「…死ぬ勇気があれば、生きる勇気だってあるはずですよ」
 
 何とかありきたりな言葉を搾り出してみたが、

 「生きる勇気…。どこにあるの? 探しに行くから在り処を教えてよ。よく言うじゃない。『死ぬ勇気を生きる勇気に変えて』とか。どうやって変えるの? 私にはその変換の仕方が分からない。みんなは知っているの? 学校で習ったはずなのに、私が聞き逃していただけなの? 研修医は知っているの? 何年生の時に教わったの? 何の教科書の何ページに書いてあったの? ねぇ?」

 質問が何倍にもなって返ってきてしまった。
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