メーデー、メーデー、メーデー。
「柴田くーん。学長がお呼びだよー」
春日先生が近付いてきて、オレの頭をポンポンと叩いた。
「……学長が?! 何故に?!」
ガバっと起き上がり、不安たっぷりな目で春日先生を見上げた。
教授も病院長も飛び越えて、最高権力者の学長がオレを呼んでいるなんて…。オレ、何をしてしまったんだ?! …イヤ、心当たりはある。薄々ヤバイと思っていたから。
多分、木南先生の件だろう。患者の意見を聞かずに、木南先生のお母さんの強引な診断を利用して治療をさせている事は、ギリギリラインでセーフだと、どうしても木南先生を助けたいがばかりに自分の都合良く解釈していたが、ギリアウトな気が、正直していた。
あの場には早瀬先生もいたけれど、有能な外科医と研修医のどちらに責任を負わせるかと問われれば、一瞬の迷いもなく後者になることは、誰にでも分かる。
「…私、救命ローテをする事なく、病院を追放されてしまいます」
最早、悪い予感しか頭を過ぎらない。顔面蒼白になりながら、重い腰はもちろん上がらない。