メーデー、メーデー、メーデー。
「…分かりました。では、失礼します」
木南先生に返す言葉が見つからないのか、早瀬先生は木南先生に頭を下げると、こちらへ向かって歩いて来た。
ドアを開けると、オレと目も合わさずに、オレの横を通り過ぎて行く早瀬先生。
「ちょっと待ってくださいよ、早瀬先生」
呼び止めても、オレの声が聞こえないかの様に、歩き続ける早瀬先生。
「待ってくださいって!! さっきの話、本当なんですか?」
早歩きで早瀬先生に追いつき、早瀬先生の前に立ちはだかると、無理矢理早瀬先生の足を止めさせた。
「家も医局も、木南先生が早瀬先生を追い出したんじゃないんですか? 早瀬先生が自ら出て行ったんですか? 木南先生を捨てたって…」
「…私は、木南先生に追い出されたりなんかしていない。木南先生を捨てたりもしていない。…でも、逃げてしまった」
早瀬先生が、歪んだ表情で、擦れる声で、後悔を露わにした。