メーデー、メーデー、メーデー。

 「…分かりました。では、失礼します」

 木南先生に返す言葉が見つからないのか、早瀬先生は木南先生に頭を下げると、こちらへ向かって歩いて来た。
 
 ドアを開けると、オレと目も合わさずに、オレの横を通り過ぎて行く早瀬先生。

 「ちょっと待ってくださいよ、早瀬先生」
 
 呼び止めても、オレの声が聞こえないかの様に、歩き続ける早瀬先生。
 
 「待ってくださいって!! さっきの話、本当なんですか?」
 
 早歩きで早瀬先生に追いつき、早瀬先生の前に立ちはだかると、無理矢理早瀬先生の足を止めさせた。

 「家も医局も、木南先生が早瀬先生を追い出したんじゃないんですか? 早瀬先生が自ら出て行ったんですか? 木南先生を捨てたって…」

 「…私は、木南先生に追い出されたりなんかしていない。木南先生を捨てたりもしていない。…でも、逃げてしまった」

 早瀬先生が、歪んだ表情で、擦れる声で、後悔を露わにした。
< 192 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop