メーデー、メーデー、メーデー。
「…違う。全然違う!! 私はただ…「嫌味1つ言われたくらいで、そんなにも声を震わせているのに、よく『全然違う』だなんて言えますね」
早瀬先生の言い分を最後まで聞こうとしない木南先生の声は、鼻水交じりでぐしゃぐしゃなのに、言い切って最後に『フッ』と吐いたため息交じりの笑い声は、不思議なまでに乾いていた。
「…もう質問はございません。そろそろ研修医が戻ってくる頃です。早瀬先生は仕事に戻ってください」
「……」
言い返す事も出来ずに立ち尽くすは早瀬先生。
「早く戻ってください。早瀬先生がここにいると、気持ちの切り替えが出来ない。泣き面を研修医に晒したくないの」
『死にたい』と口にしながらも強気な木南先生は、気弱なのか気丈なのか分からない。
ただ、木南先生がオレに泣いてしまった事を隠したいと思っているのであれば、木南先生の目や鼻がどんなに赤くなっていたとしても、気付いていないふりをしようと思った。