メーデー、メーデー、メーデー。
「…でも、木南先生はまだ入院中で…木南先生に頼るなんて…」
自分の力で何も出来ない挙句、病気の木南先生に頼って良いのだろうかと戸惑っていると、
「オイ。有給中に家に押しかけてきて、オペまでさせたくせにどの口が言っているんだよ。私は今、病人だけどアンタよりは知識はあるつもり。使えるものは何でも使いなさい。それで命が助かるのなら」
木南先生がオレの手から受話器を奪い、『今行きます』と看護師さんに勝手に返事をして電話を切ると、オレの背中を押した。
そうだ。オレは医者だ。四の五の言っている場合ではない。命が助かる方法があるのなら、遠慮などしていられない。
「…木南先生。『病室に戻れ』って言った事、撤回します。誰かに見つからない様に隠れて医局に待機していてください。木南先生の協力が必要です。電話するので指示ください。オレ、行ってきます」
医局を飛び出そうとした時、
「頑張れよ!! 柴田先生!!」
木南先生に聞きなれない呼ばれ方をされ、
「え?」
思わず足を止めかけると、
「急げ!! 馬鹿!!」
木南先生に大声で怒られた。
木南先生、オレの事『柴田先生』って呼んだ? 聞き間違い? …そんなのどうでもいいや。早く患者さんを助けに行かなければ。
「はい!!」
木南先生に負けないくらい大きな声で返事をして、患者さんの元へと急ぐ。
命が助けを呼ぶのなら、オレは片っ端から治したい。
メーデー、メーデー、メーデー。
おわり。


