ただいま冷徹上司を調・教・中!



「週末デート、大成功だったみたいですね」

出勤した早々、ほくほく顔した瑠衣ちゃんからそう囁かれて、私は思わずへらっと笑みを漏らしてしまった。

「まさか、この短期間で本当にラブラブになっちゃうなんて驚きです」

まあ、本当のラブラブとは程遠いのだけれど。

瑠衣ちゃんや紗月さんには『仮』とは伝えていないのだから、そう解釈されても仕方がない。

それにしても……だ。

「平嶋課長ってクールなイメージしかないから、恋人と手繋ぎデートするなんて意外でした」

そう、週明けの社内は、土曜日の私と平嶋課長のデートの噂でもちきりなのだ。

人がわんさか集まり、デートスポットでもあるアウトレットに、私達以外の同僚が来ていないはずがなかった。

数人の人に目撃され、私達は再び渦中のカップルになったというわけだ。

どうしてこうなることを予測できなかったんだろう。

それほど浮かれてしまっていたのだろうか。

……浮かれてたんだろうな……。

今でも瑠衣ちゃんからラブラブたと言われるだけで、私の顔面はるゆるゆになりそうなのだから。

「クールなのは会社でだけだよ」

たくさんの平嶋課長の表情を思い出すと、途端に顔に筋肉が緩んでしまう。

「わっ。カップルらしい答え。千尋さん可愛いし羨ましいですっ」

きゃっ、と言いながら体を捻らせる可愛い瑠衣ちゃんは、純粋に私達を本物の恋人同士として見ている。

それがなんだか申し訳なくて。

少しだけもどかしくて。

ちょっぴり切なくなった。

土曜日から私はなんだかおかしい。

平嶋課長が急に応用問題をクリアしちゃったから。

大きな成長を遂げちゃったから。

戸惑ってしまって、心が乱れただけだろうけど……。

出来が悪いと思っていたけれど、やれば出来る子は伸びるのも早い。

偉そうにしていても、私だって本当は大したスキルを持っていないのだから。

立場が逆転しないように気をつけなければ。

私はザワザワしっぱなしの心をなんとか落ち着けようと、体の芯に力を込めた。
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