ただいま冷徹上司を調・教・中!
これは言わない方がいいと自分でもわかってる。

「だから……」

わかっているけど、苛立って仕方がない。

「だから私のこと、諦めなくていいって言ったんですか?」

彼女の親友と浮気して、簡単に彼女を裏切った和宏なのに。

その和宏の気持ちを考慮して、平嶋課長は『諦めろ』と言わなかった、と?

「いや、俺はただ吉澤にも思うところがあるだろうと……」

「私の気持ちはっ」

平嶋課長の言葉を遮った私の叫びが会議室に響く。

「和宏も平嶋課長も同じ。だれも私の気持ちは優先してくれないんですね」

涙が溢れそうになって、私はそれを隠すように俯いて呟いた。

「それは違うぞ。俺は二人のことを考えて……」

「私のことを本当に考えてくれているなら必要ないでしょう?それに……」

一番私の心に引っかかっていたこと。

それは。

「私の恋人なら、ハッキリと諦めろって言ってくれるのが本当なんじゃないんですかっ?」

平嶋課長があろうことか、第三者的立場のもとで言葉を発したことだ。

私にとってそれは、本当は私のことなど微塵も興味を持っていないと言われたのと同じ意味を持っていた。

私の言葉にハッとした平嶋課長は、完全に言葉を失ってしまったようだ。

もっとも上辺だけで『そんなわけない』と言われても、信じることなんてできないけれど。

ここにきて『仮』の関係がこんなに腹ただしくてもどかしく感じるなんて思いもしなかった。

こんなことを口走って、こんなに後悔するような関係が。

イタイ……。

「すみません。助けてくれてありがとうございました。帰ります」

泣き顔で崩れてしまう前に、私は戸惑っている平嶋課長の横をするりと抜けて会議室を後にした。
< 128 / 246 >

この作品をシェア

pagetop