ただいま冷徹上司を調・教・中!
そんなの贅沢なことだって、本当はわかってる。

私と平嶋課長は思いの丈が違うんだから。

それを望むのは間違っているんだ。

なんて、偉そうに言ってみるけれど、そう思えるようになったのは怒りが覚めた二日後だった。

ダメだな私は。

作られた関係と現実の区別がつかなくなって、無理にでも進展させたくて焦りすぎている。

それでも自分の本音をぶつけてしまっているのは、もう恋愛において諦めたくなかったからかもしれない。

「それが久瀬が怒ってた理由か?」

少し呆れたように聞こえたのは、私の思い違いだろうか。

「俺はまた、久瀬に対してよっぽど何かしでかしたのかと思ったよ」

ふっと漏らすように笑った平嶋課長は、怒っても呆れてもないようだった。

「……なんで笑うんですか」

平嶋課長の表情に安心したものの、笑われると面白くないのがダメなところだ。

「いや、久瀬はなんだかんだ言って、俺のことはわかってないな、と思って」

「どうことですか?」

そりゃ確かに私は自分のことばっかりで、平嶋課長の心の中を考えることはしていなかったけど。

それは仕方がないでしょう?

だって私は平嶋課長のことを何も知らないから。

完璧なのに恋愛においては全くダメで、すぐ女にフラれる残念な人。

それくらいしか知らないんだもの。

自分が平嶋課長のことを知らないと再認識したら、それは平嶋課長だって同じなんだと今さらながらに気付く。

私はなんて自分勝手な女なんだろう。

「私、平嶋課長のこと全然知りません。なにか思惑があったなら教えてください」

身体ごと向き直って素直にそう言うと、平嶋課長はにこりと笑ってくれた。
< 138 / 246 >

この作品をシェア

pagetop