ただいま冷徹上司を調・教・中!
「そんなこと気にしなくていいわよ。千尋ちゃんの顔を見てれば、なにかよほどのことがあるんだろうなってわかるもの」

「紗月さん……」

紗月さんのこのふんわりとした笑顔には、いったいどれほど助けてもらっただろうか。

できることならこんな姉が欲しかった。

……一人っ子だけど。

明るく振る舞おうと努力はしているけれど、やはり気を抜くと昨日のことが思い出されてしまって、頑張っている私の笑顔を曇らせてしまう。

紗月さんはそんな私の心情を、なんとなく感じ取ってくれていたんだろう。

「まだ何もアクションを起こしてないんですけど……私、今日、吉澤さんと別れようと思ってます」

「別れる?ずいぶんと急な話ね。昨日の帰りまでは残業後に彼の家に行くって笑ってたのに」

そう、昨夜は私の帰りが遅かったから、和宏とのデートをキャンセルした。

けれど思いのほか早く終わったので、和宏の家まで行ったのだ。

そのせいでこんなことになってしまったというわけだが。

「今となっては行かなきゃよかったと後悔してます」

「なにがあったのか話してごらん?」

始めから相談しようと思っていたのに、今さら口籠ってしまう私を待ってくれている紗月さんのデスクに、給湯室から戻ってきた瑠衣ちゃんがマグカップを置いた。
< 14 / 246 >

この作品をシェア

pagetop