ただいま冷徹上司を調・教・中!

「もう熱は下がったのか?」

するっと頬を包まれて私の心臓は飛び跳ねた。

最近の凱莉さんは、なんだかとても優しくて、こんなふうに自然に触れてくるようになった。

それがくすぐったいほどに嬉しくて、ちょっぴり切なく感じる。

この温もりが、本当に私のものになればいいのに。

そんな夢みたいなことを願ってしまう。

「もうすっかり」

ニコリと笑って元気をアピールすると、凱莉さんはホッと安心したかのように微笑んだ。

こんな笑顔のひとつひとつが狡くて、苦しいくらいに隙を実感させられる。

「疲れが出たのかもしれないな」

「疲れ……ですか?」

なんの疲れだろう。

先週もいつもの日常で、特別変わったことなんてなかった。

大体この熱も、凱莉さんとの約束がキャンセルになった後、雨に打たれてしまったのが原因で、完全に自分の不注意なわけだから。

「お母さんの具合、大丈夫だったか?」

ん……?

お母さん……?

「え……誰の……?」

意味がわからず聞き返すと、凱莉さんこそ意味がわからないという表情になった。

「や……千尋のお母さん……だろ?」

「私のお母さん……具合悪いんですか?」

「それを俺が聞いてるんだ。もうよくなったのか?」

なんていうんだろう。

このちぐはぐな会話はどういうことだろう。

「凱莉さん。私、よく分かりません」

「俺もだ」

私達は間の抜けた顔で見つめ合った……。

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