ただいま冷徹上司を調・教・中!
ちゃんと凱莉さんに説明した方がいいのだろうか。

けれどそれも悩むところだ。

なにせ私達の関係は正式なものではない。

人との……ましてや同僚との男性トラブルなんて、やっぱり凱莉さんの耳に入れないほうがいいだろう。

「いくら急いでいたとしても、約束のキャンセルは人に頼みません」

短く溜め息をついてそう言うと、凱莉さんも「そうか」と溜め息交じりに呟いた。

「じゃ、千尋のお母さんの話は?」

「めちゃめちゃ元気で、今のところ倒れる要素はゼロですね」

苦笑いした私に安心した凱莉さんは、よかったとでもいうように私の頭を撫でてくれた。

「梨央はそれだけしか言いませんでした?」

あの梨央が、そんなに簡単に引き下がるはずはないのだけれど。

「ああ、まあ……」

「……嘘ですね」

なんて誤魔化し方の下手な人なんだろう。

まあ、そっちの方がわかりやすくて安心するからいいが。

「その……植村は、俺と千尋が付き合ってることを知らないのか?」

「いいえ、知ってますよ」

仮ということまでは知らないけど。

「やっぱり何かあったんですね」

目を細めて白状しろとばかりに先を促すと、凱莉さんは言いにくそうに口を開いた。

「……誘われた」

「やっぱり」

そんな事だろうと思っていた。

あの梨央が私と凱莉さんの予定を割いておいて、それだけで満足なんてするはずがないのだから。
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