ただいま冷徹上司を調・教・中!
ふわりと香った安心するにおい。

「凱莉さん?」

くぐもった声で問いかけると、ゆっくりと頭を撫でて返事をしてくれた。

「どんなふうに誘われたか、なんてどうでもいい。俺は誘いに乗らなかった。それが事実だよ」

それが私にとって、どれだけ心を癒しくれるか。

凱莉さんはわかっているんだろうか。

私は凱莉さんを信じてないわけじゃない。

けれど梨央が絡むと、どうしても不安になってしまうのだ。

「言うのを避けてしまったのは、やましいことがあるからじゃない。酷い断り方をしてしまったから、千尋と植村の関係にヒビが入るんじゃないかと考えてのことだ」

私の想像が及ばなかった凱莉さんの言葉に、胸の中で私はそっと顔を上げた。

「どう断ってくれたんですか?」

そう尋ねると、凱莉さんは少し困ったような笑顔で、再び私の顔を自分の胸に戻した。

「簡単に言うと……。千尋と過ごすためにある時間を植村に使おうとは微塵も思わない。千尋と付き合っている俺が、植村を含め他の人になびくこともない。何をしても無駄だからいい加減に諦めろ……って……言ってしまった……」

「ふふっ……」

思わず笑ってしまうほどハッキリとした言葉。

とっても凱莉さんらしい言葉のチョイスだ。

私だけを。

仮といえども、本当に私だけを見てくれている。

私だけを特別にしてくれて、私だけを大切にしてくれる。

そんな凱莉さんだもの。

恋に落ちないわけがないんだ。
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