ただいま冷徹上司を調・教・中!
「帰るんですか?」
ダルさの残った身体を起こし、私はジャケットを羽織る凱莉さんの背中に向かって言った。
「ごめん。起こしたか?」
「いえ……それは大丈夫ですけど」
部屋の時計は午前一時。
私は一時間近くも眠っていたらしい。
土曜日の今日は朝からずっと凱莉さんと一緒にいた。
水族館に行って綺麗な魚たちを眺め。
可愛いイルカやアシカのショーを見てはしゃぎ。
晩御飯はネットで有名なビストロで美味しい料理とワインを堪能した。
私の家に帰ると、私達は自然にキスを交わして深く求め合った。
なのに今、ベッドの中には私一人だ。
「今日は楽しかった。ゆっくり休めよ?」
少しはだけた布団を私にかけなおし、優しいキスを落として凱莉さんは部屋を出て行った。
扉が閉まる音が聞こえると、私の胸にはぽっかりと穴が開く。
こんなに一日一緒にいて、あんなに笑い合ったのに、凱莉さんは私にすぐ背を見せる。
明日も休みなわけだし、別に泊まっていったっていいのに。
私達は一度も一緒に朝を迎えたことがない。
どんなに遅くなっても、凱莉さんは必ず帰るし、必ず送ってくれる。
もっと一緒にいたい。
心で何度もそう叫ぶが、私達の曖昧な関係が口を噤ませる。
どんなに想っても、どんなに身体を重ねても。
私達は本物じゃない。
それが私の心に影を作っていくのだ。