ただいま冷徹上司を調・教・中!
「ちょっとこっち」

紗月さんが出勤する人の流れから私を引っ張り、会社の手前にあるコンビニの駐車場へと私を引き入れた。

「いったいどうしたっていうんですか?」

いくら時間に余裕を持って家を出たとはいえ、それでも始業時間二十分前だ。

そこまで時間があるとは言えない。

「時間がないんで単刀直入に言いますね」

瑠衣ちゃんがずいっと私との距離を縮めてくる。

「千尋さん、金曜日に平嶋課長に連れられて帰りましたよね?」

そう言われて私は平嶋課長が言っていた言葉を思い出した。

私の荷物なんかを紗月さん達から受け取ったけど詳しい説明はしていないので、誤解はしっかり解いておくように……というような話ではなかっただろうか。

「それは誤解なの。私が酔っ払って意識を飛ばしちゃったから……」

恥ではあるがちゃんと説明しなくてはと話し始めたのだが。

「そんなことはいいんです!問題は見られてたってことなんですっ!」

興奮して早口になる瑠衣ちゃんの背中をなだめながら、紗月さんがバトンを受け取った。

「飲み会の会場近くにあるクリニックで機材入れ替えを手伝っていた一課の人数人がね、タクシーから降りてホテルに入って行く千尋ちゃんと平嶋課長を見たっていうの」

「それだけじゃなくて、翌日昼間に千尋さんと平嶋課長が仲良くランチしてたのも目撃されてるんです!グループSNSから広がって、社内中の噂ですよっ!」

「うそっ!」

私は一気に血の気が引くのを感じ、激しくなり始めた鼓動を抑える為に胸元を握りしめた。
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