ただいま冷徹上司を調・教・中!
こちらから話すことなど何もない。

敢えて目を逸らしてこちらからは話を振らずにいると、梨央は私と視線を合わせることを諦めたようで口を開いた。

「平嶋課長との噂、驚いたわ」

そりゃそうだろう。

私だってこんなことになるとは想像もしていなかったのだから。

「いきなりホテルで一泊だなんてね」

記憶さえもない一泊だけれど。

「けれどまさか吉澤さんと別れてすぐに平嶋課長とそんな関係になってるなんて……」

そんな関係もこんな関係も、なんの関係でもないというのが本当のところなのだが、梨央に教えてやるつもりはない。

勝手に勘違いしていればいいんだ。

「吉澤さんと私があんなことになっても、千尋は痛くも痒くもなかったっていうことなのね」

「……は?」

「平嶋課長とそんな関係なら、吉澤さんなんていらなかったでしょ?」

吉澤さんなんて……か。

確かに今となってはいらないと思えるが、あの時にそんなこと思っていたわけないじゃないか。

「だったら私達がいがみ合う必要性もなかったってことじゃない?」

「なに……言ってるの?」

「最初から言ってるじゃない。私は千尋が好きだから、千尋の好きなものに興味があっただけ。でも吉澤さんを試すことなんてなかったんじゃない。平嶋課長がいたんだもの」

「ふざけんじゃないわよっ!」

何かを考えるよりも先に、私は梨央を怒鳴りつけていた。
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