ただいま冷徹上司を調・教・中!
なんでもかんでも自分が勝っていると思うなってんだ。

「なにが言いたいのかはわかる。平嶋課長が梨央じゃなくて私を選んだってことが気に入らないのよね」

何度も言うが、本当は選ばれてないけどさっ。

「別に千尋を選んだことをどうこう言ってるわけじゃないじゃない」

十分言ってんだろうがっ。

「平嶋課長が誰を選ぼうが平嶋課長の自由よ。そんなことはわかってるの。ただ私はどうして千尋だったのかが知りたいだけよ」

薄笑いを浮かべながらも淡々とそう言ってのける梨央の目論みを、裏切られたばかりの私が気付かないはずがない。

つまり梨央はまた私から平嶋課長を拝借しようと思っているのだろう。

そしてそれは私相手ならば容易いと思っている。

「そういうことね……」

「え?」

「そんなに興味があるのなら、平嶋課長を誘惑でもしてみれば?彼は和宏と違って絶対に梨央になんかには落ちないけどねっ」

ビシッと指さして胸を張ると、梨央は目を丸くして私を凝視した。

「この際だからハッキリと言っておくわ。私は梨央と元のように仲良くするつもりも、平嶋課長を譲る気もないから」

「そんなぁ。私は千尋のこと大好きなのに」

既に背を向けて出て行こうとしていた私の背中に、甘えた梨央の声が刺さる。

途端に虫唾が走った。

「なにをどう言われても無理だから。お疲れ様」

振り向きもせずにそう言い捨てて、私は休憩室を後にした。

カツカツとヒールを響かせながら私が思うことはただ一つ。

さて……どうやら私は本当に平嶋課長の彼女にならなくてはいけないらしい。

どうすれば平嶋課長の特別枠に入れるのか……。

それだけだった。
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