ただいま冷徹上司を調・教・中!
「最近仕事がやりにくくて仕方がないんだが、何かあったのか?」
水曜日の仕事帰り、偶然にも帰宅時間が重なった平嶋課長から唐突にそう聞かれ、私はあんぐりと口が開いてしまった。
平嶋課長の発言と、梨央に対する宣戦布告を漏らされ相成り、私と平嶋課長の噂は確実視されることとなり、常に私たちの一言一句は注目されることとなった。
それもこれも全部……。
「平嶋課長がいけないんですよ」
「俺の何が悪かったんだ?」
そうサラリと聞いてくるあたり、自分の失態がまるでわかっていないのだろう。
駅に向かい、私達は自然に並んで歩きだした。
「直接私との噂は本当なのかと聞かれたとき、きっちり否定しなかったからこんなことになったんですよ」
私とは全く関係ないと平嶋課長が口にすれば誰しも信じたというのに。
「ちゃんと否定したじゃないか。デートはしていないって」
「デートを否定するよりホテルを否定してほしかったですね」
「それは目撃者がいる以上、否定はできないだろう?事実は事実だしな」
確かにシラを切ったとしても、絶対に見たとムキになって言われてしまうほうが面倒だが。
「事実を公にして私との関係性を否定すればよかったじゃないですか」
そうすればもっと簡単に事は収まっていたはずなんだ。
ヒールに八つ当たりするかのように強めにアスファルトに叩きつける。
「俺はそれでもいいけど、久瀬は手痛いだろう?女なんだから」
真っ直ぐ進行方向を向いたまま視線もぶつからない平嶋課長の心情を、表情から盗み見るのは無理があるようだ。
けれど嫌味じゃなく素直に解釈できてしまうのは、イケメンマジックというやつだろうか。
平嶋課長の口から女だからと聞くと、とても女扱いしてもらっていると勘違いしそうで恐ろしい。