ただいま冷徹上司を調・教・中!
全体の朝礼が終われば、次はそれぞれの課での朝礼が始まる。

たくさんの課で区切られているが、私は総合6課に配属しており、得意先は総合病院などの大手を主にしている課だ。

私は営業事務なので得意先に出向くことは殆どないが、たまに緊急な納品の場合は私が動くこともある。

総合6課は事務が4名営業12名の総勢16名で、それを率いているのが課長である、平嶋凱莉(ヒラシマカイリ)35歳だ。

容姿端麗、頭脳明晰。

この言葉は彼のためにある言葉だと私は思っている。

それほどまでに彼は全てにおいて芸術作品のように完璧だ。

おまけに独身とくれば、女子社員なら一度は狙い定めるはずの特上の獲物だろう。

しかし残念なことに彼は冷徹すぎた。

女のどんな言葉にも、どんな甘い誘惑も、笑顔一つ見せはしない。

それどころか『そんな夢を見ているくらいなら仕事で得を持ってこい』と言い放つのだ。

並の男ならばそこで嫌われもするのだろうが、そこはさすが特上、平嶋凱莉だ。

そんな媚びないところも素敵だと、彼の人気が落ちることはない。

今や誰もが認める『皆の平嶋凱莉』となっている。

確かに顔がよくて、仕事ができて、部下の面倒見もよくて、一般常識も兼ね備わっていて、文句の付けようのない男なのだろうが、だからこそ私は平嶋課長が苦手だ。
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