戦国恋武

「別に謝らなくても良い。世は広いのじゃ。信長も申しておった。まだまだ知らない事が世の中にはいっぱいあるのじゃと。アマセのように笑わぬ者も口数が少ない者も1人や2人おっても全くおかしくはない。」



そんなこと、初めて言われた。私は、無表情と無口なことで、周りに気味悪がられてきた。物珍しく寄ってきた人もいたが、皆すぐに離れていく。両親だけが、私の味方だったが、その2人ももういない。1人ぼっちの私。



「…で、じゃ。本題に入っても良いか?」



本題…?



「お主、信長にならぬか?」



「…………………は?」



織田信長の件、そういえば解決してなかったんだった。一体どういうことなの?



「これは他言無用なのじゃが…。先日、織田信長は、死んだ。でも死ぬのが早過ぎたのじゃ。日の本の天下を取る。そして、戦のない世を創る。それが信長の野望であったが…それを私に語った翌日、帰らぬ人となった。」



最近のことのように話してるけど、織田信長って大分昔に亡くなった人だから。



「織田信長を殺したのは、弟の信行じゃ。しかしこやつも何者かによって暗殺された。それも切腹したように見せ掛けて。しかし、信長を死に追いやったのは信行1人ではないと思うておる。信長殺しの一切を信行に擦り付ける何者かがいるはずじゃ。」



濃姫さんは深刻な表情で話すが、私は訳がわからないまま話を聞き続ける。



「信行の死体は見た者が多く、隠すことは出来ぬ。しかし、信長は家督を継いだばかりの適男。死を知るのは、私と恒興のみじゃ。」



織田信長は弟に殺されて、弟は共犯者に殺されて、死んだことを知ってるのはこの2人だけ。



あれ?弟に殺されるんだっけ?確か家臣の誰かに殺されるんじゃなかった?で、信長を殺した人が天下人になったと思うんだけど。



「そこでアマセ!お主の出番じゃ。」



私?どこに私の出番があると?


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