戦国恋武
頭が真っ白だ。
戦国時代って、タイムスリップって、こんなこと自分に起きるなんて思ってもみなかった。まだ信じられない。
「…織田信長となると命懸けになるじゃろう。タダでとは言わん。何か欲しいものがあれば何でもやろう。天下以外じゃと何でも用意出来るぞ。」
命が惜しい訳ではない。
昨夜私は自分で自分の命を絶とうとした。孤独の私がいなくなった所で誰も悲しまない。
「どうじゃ?尾張にも日の本にも、勿論私にもアマセが必要なのじゃ。」
私が必要?両親が亡くなって今まで私を必要としてくれる人は誰一人いなかった。今までずっと孤独だった。命を絶とうとまでした。そんな私が必要だとこの人は言っている。
「…すぐに返事は難しいか。そうじゃな、3日じゃ。3日後に答えを聞こう。それまでに考えておくのじゃ。ただし、この3日の間アマセは織田信長としてこの城にいるのじゃ。アマセの正体を私達以外の者に絶対に知られるな。良いな?」
私が何も言えずにいると、濃姫さんが猶予をくれた。猶予は3日。それまでに決めなければならない。織田信長として生きるか、松本天正として生きるか。あっ、遅くなりましたが、苗字松本です。
「恒興はアマセの補佐にまわれ。慣れぬ土地での生活じゃ。不憫なことがあるじゃろう。何かあれば、私でも恒興でも気軽に申せ。」
「はっ!かしこまりました。」
私もコクンと頷く。
それから濃姫さんと池田恒興さんは部屋から出ていき、部屋に1人残された。これから一体どうなるのか。そんなことを考え不安に思いながらも、本当に疲れていたのか、すぐに眠りにつくことが出来た。