戦国恋武
………なんだか、視線を感じる。
「………ふぁっ!?」
目を開くと目の前には濃姫さんのドアップが!
あまり人との関わりがないので、近くに人がいることにまだ慣れない。
「色気のない声じゃ。まぁ、男として生きるのだから女の色気は必要ないがの。」
私には色恋沙汰など無縁だったのだ。色気もクソもない。それにしても、3日後に私が織田信長になると決断すると思っているのか。男として生きる前提の話だ。
「まぁよい、朝粥を食べたら出掛けるからの。早く支度せい。」
濃姫さんが用意してくれたのか、布団の横にお粥と白菜のお漬物が置いてある。それをいそいそと食べ終わると、濃姫さんが着物を持ってきてくれた。
「あ……朝御飯、ありがとうございました。」
あまり人と会話をしないため恥ずかしく、消え入りそうな程小さな声でお礼を伝える。
「これくらい何でもない。作ったのは私ではないがのぉ。」
とクスクス笑っている。
森親子に冷たい扱いをしていた濃姫さんとは思えない程に優しい表情をしている。
「出掛けるからこれを着るのじゃ。」
着物を受け取るが、着物を着たこともなければ、これは男物。着方がわからない。