誓約の成約要件は機密事項です
すみません、すみませんと謝り続ける千帆は、それを宥める合間に涼磨がついた溜め息を聞いた。

――終わった。

この程度で騒ぐ面倒な女など、呆れたことだろう。これで、涼磨からのちょっかいはなくなるはずだ。

せいせいする、とは思えない。言い知れない不安で、いっぱいだ。

その後、ケーキスタンドとポットを空にし、裏庭も散策したはずだが、よく覚えていない。

帰ってから開いたスマートフォンには、裏庭に咲き誇る薔薇の写真が収められていた。寒空に棘を突き刺しながらうつむく、とても深い……深い紅色の薔薇だった。





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