誓約の成約要件は機密事項です
どうして、涼磨がここに?

那央といるはずでは?

千帆がここにいることを、どうして知った?

そして――どうして、涼磨は千帆を止めようとしているのだろう。

「相澤さん、これはどういうこと? この人と付き合ってるの?」

「いえ……あの、副社長、離してください」

涼磨は、渋々ながら千帆を自力で立てるように拘束を緩める。

しかし、囲い込む腕はそのままだった。

締まらないながらも、千帆はどうにか体勢を立て直した

「付き合ってないなら、君も俺と同じ立場ということか」

「同じ……?」

首を傾げる涼磨に、高林が言い募る。

「相澤さんに好意を寄せているだけなら、君も俺も同じだろう。今日は、相澤さんは俺と約束していたんだ。悪いが、帰ってくれないか」

「……千帆」

涼磨が、後ろから千帆を覗き込んでくる。縋るような視線に、千帆は耐え切れない。

「千帆っ!」

耳を塞ぎたくなるような悲痛な声だ。

「……副社長、お願いですから、手を離してください。逃げ出したりしませんから」

「……」

「副社長」

ようやく涼磨の腕が離れる。

その代わりのように自分の腕を体に巻きつけながら、千帆は高林に向き直った。

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