仮面のシンデレラ《外伝》


しぃん…


牢獄が静まり返る。

何の音も聞こえない。


「……。」


振り返ると、エラはぴくり、と肩を震わせた。

空色の瞳が僕をまっすぐ映している。


すっ…


静かに立ち上がり、彼女へと歩み寄る僕。

ふわり、と彼女の髪がなびいた。

近くで交わる視線。

2人は、そのまま何も言わずに腕を伸ばした。


ぎゅっ…!


包み込むように抱きしめ合う。

ぐっ…、と背中に回された腕に力が込められた。

僕は、ぽつり、と呟く。


「…ごめん、来ちゃった。」


「…!」


エラは小さく息をした。

そして、弱々しく笑ってそっ、と言う。


「…この前と逆になっちゃったね…。…こんな姿、見られたくなかったのに…」


か細い彼女の声は、少しだけ震えていた。

心ごと抱きしめるように、彼女の肩へ顔をうずめる。

温かな体温が、まだ彼女が生きていることを実感させた。

体の力が抜けていく。


「…ねぇ、湊人くん。まさか、あのレンガの路地を通ってこの国に…?」


「うん。…すごいね、あの扉。死ぬかと思った。」


くすくすと笑う彼女は、僕の感触を確かめるように抱きついた。

そして、そのまま言葉を続ける。


「…やっぱりすごいね、湊人くんは。この国で会えるなんて夢にも思わなかった。…どうやってここまで来たの?」


僕は、静かに答える。


「…魔力を分けてもらったんだよ。親切な魔女がいてね。」


「“魔女”?」

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