仮面のシンデレラ《外伝》


バサバサバサッ!


つい、抱えていた絵本を落とした。

一瞬集まる視線。

何事もなかったかのようにそれぞれの本へ視線を移す人々に頭を下げ、僕はドキドキしながら本を拾う。


「…私、変なことを言ったかな…?」


おずおずと尋ねる少女に、僕はぷはっ!と吹き出す。

まるで“どこかの大学生”を見ているようだ。

笑いが止まらない僕に、きょとん、とする彼女。


「?、??…なんで笑ってるの?」


「ううん、何でもないんだ。…君はとっても素敵なことを言ったよ。」


小さなお姫さまが、わずかに首を傾げた。

不思議そうな顔をする彼女に、僕は優しく笑いかける。


「…あっ、いた!ありす!」


(!)


ふと、背後から声が聞こえた。

漆黒の髪の少年が、ぱたぱたとこちらに駆け寄ってくる。


「あっ!ゆうくん!」


「もう!図書館の前で待ち合わせって言っただろ。…はぁ、つかれた。」


(…おてんばなお姫さまには騎士くんがいたんだな。)


会話を交わす彼らを見つめていると、少年がちらり、と、こちらを向いた。

警戒する視線に、思わず目を丸くする。


「…このひと、誰?」


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