今夜、お別れします。


「俺、羽山さんといるとホッとする。すごく癒される。だから、俺と付き合ってほしい」


そう告白された時は信じられなくて、すぐに答えられなかった。


だって、相手は営業部のホープだ。女子社員の注目している人だ。


そんな人と付き合う自信もなかった。


私を相手に選んだ彼が、同僚や、女子社員からどういう目で見られるのか考えるだけでも怖かった。


桐谷は、私に自分を卑下し過ぎると言うけれど、自分のことは自分がよく分かっている。

仕事でもプライベートでも、なんの憂いもなく自信満々な桐谷と、地味で、目立たなくて、なんの取り柄もない自分に社内恋愛というものができるわけがないと思った。


そんな理由で返事を渋る私に、彼は心底呆れたのかもしれない。


呆れたなら、それはそれで告白を取り消してくれればいいのに、何故か彼はそうしなかった。


「社内恋愛なんて周りも気をつかうし、めんどくさいよな。だったら内緒で付き合えばいいんじゃない?会社では今まで通りで、会社の外で会えば人目を気にしなくても済むだろ?」


結局彼に押し切られる形で付き合うことになった私達。


それから少しして、桐谷の仕事が今よりさらに忙しくなって、私達は付き合っているとは言え、会うのは夜、桐谷が仕事終わりに私の家に来てくれた時だけになった。




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