今夜、お別れします。


「こら、可愛いことばっかり言うなって……これでも萌奈のこと大事に抱きたいって必死で堪えてんだから」


「堪え、る?どうして……?」


「だーかーらー、久しぶりだから、煽られると自制心もたないの。萌奈のことめちゃくちゃに抱いたらキツイでしょ?」


子供を叱るような、そんな声音の端々に既に桐谷の熱が溢れて伝わってくる。


あぁ、そういうことか。

久しぶり、だもんね。


「ゆ、せい……今日は、いいよ。悠生と思いっきり抱き合いたいから……その、加減とかは……」


言葉にすると恥ずかしすぎる。

よく桐谷は言葉にしてくれていたなと今更ながらに感心する。


ほら、案の定桐谷驚いて言葉失ってるし……。


顔から火が出そうな位恥ずかしくて、桐谷から顔を逸らせた。


「萌奈……」

「……」

「萌奈」


優しく名前を呼ばれて、ゆっくり桐谷に向き直った。


桐谷と目があって、啄ばむようなキスが何度も降ってくる。


何度も抱き合ったはずなのに、まるで初めて抱き合った時のように求めて、求められて。


何度も名前を呼ばれて、何度も名前を呼んで……。


私達はその夜とても幸せな時間を過ごした。







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