シンデレラのドレスに祈りを、願いを。
夏休みが終わって通常モードに戻った。4時に図書館で待ち合わせて当たり障りのない場所をふらつく。背が高くて甘いマスクの悠季くんはみんなの注目の的だった。すれ違う女子高生がちらちらと悠季くんを見たり、あからさまに指をさす子もいた。

当の本人は我関せずで、私の手を取り、行きたい場所に私を連れていく。

カフェで悠季くんが注文するのは決まってミルクティ。チャイがあれば必ずチャイ。濃厚なミルクとスパイスに負けない茶葉の風味のもので、たいていはアッサムかウバだった。悠季くんはこういうのが好きだ。たっぷりの蜂蜜を入れて甘くするのも。

だから自ずと足が向くカフェは絞られて。いつも同じところだねごめんねって笑う悠季くんがかわいくて。私はコーヒーだからどこにでもメニューにあった。

悠季くんは両手で囲うようにカップを持ち、そっと口を付ける。まぶたを伏せたときのまつげの長さや突き出した唇を私は目に焼き付けるためにそっと見つめる。

だって、必ず、別れる日がくる。
ずっと見つめる資格は私にはない。

だから、もう、悠季くんとはあんなことはしない。
 
そもそもそんな機会はないだろう。そのうちに他の女の子に興味も移るだろうし。

ほっとする半面、言いようのない寂しさに襲われた。



*―*―*

二度目のそれがやってきたのはクリスマスだった。冬休み、悠季くんは再び私服になった。ジーンズに黒革のライダースジャケット、スニーカー。大人びた服装に私の心が高鳴る。夏のあの日の光景が私の脳をよぎったのだ。
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