シンデレラのドレスに祈りを、願いを。

悠季くんの前から姿を消す必要があった私は仕事を辞め、アパートも引き払うことにした。

でも妊娠している私を雇ってくれる会社はなかったし、連帯保証人のない私にアパートを仲介する不動産屋もなかった。それでもようやく見つけた内職の仕事と古い貸家。わずかでも収入があることに、住む家があることに、そしてお腹の赤ちゃんが元気に育っていることに感謝した。わずかな蓄えを切り崩して、なんとか出産までこぎつけた。

出産してからは託児所付きのパチンコ屋さんや病院の清掃業務をこなした。真面目に仕事をするうちに、知り合いが正社員の事務職を紹介してくれた。小さな建築事務所の事務だったけれど、定職に就いたことで悠斗を保育園に預けることもできたし市営住宅に引っ越すこともできた。

それでも固定給は安く、生活をするにも子どもを育てるにも満足な金額ではなくて。毎月、通帳とのにらめっこだ。私は建築事務所が休みになる週末にバイトをすることにした。パーティーコンパニオンだ。

ユニフォームを着て来客者に飲み物を配る仕事。難しいことはないけれど、ユニフォームはきわどいものだった。黒のワンピースは膝上のタイトミニで襟も大きく開いている。ボレロをはおるけど、オーガンジーだから見せているも同じ。泥酔したお客様がぎらついた目で品定めをし、その胸元や太ももに手を入れてくることがたびたびあった。同僚の話だとスナックやキャバクラに比べればまだましらしいけれど。

時給も高いし、託児所もある。生活のためと割り切って私はバイトをしていた。

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