バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
バターをたくさん使ったであろう美味しいパンの焼ける匂いを想像する
ルームサービスメニューをみながら、
旅館だけど和食、洋食と充実しているようでさすが高級旅館だなと感じる
「お腹すいた~、どっちも迷うな~」
でも、お品書きを見る限りは和食も捨てがたい
「たまごやき、オムレツ…、釜炊きごはん、焼きたてクロワッサン…、ふわふわバターロール、でもおだしのきいたお味噌しるっ…」
(あぁ、早く決めなきゃ…)
決められない、普段は即決即断な私があまりの空腹と魅力的なお品書きに揺さぶられる
頬杖をついて背後からこちらを観察していた彼が見かねたようで、電話で和食と洋食を一つづつ頼む
はだけた浴衣で電話をかけているだけなのにめちゃくちゃ色気があって様になる
絶対日本人じゃない顔つきなのに和装まで似合うなんて、美形ってすごいなと感心してしまう
「吸血鬼もごはん食べるんですね」
彼が食べ物を口にしたところを見たことがない
私のためにテーブルいっぱいのコンビニお惣菜を用意してくれたときも彼は何も手をつけていなかった、思わず好奇の目で彼を見てしまう
「食べれないこともないが、そもそも必要ない」
「え?」
「両方食べられるだろ?残ったらオレが食べるから心配ない」
「…はい」
(また甘やかされているし、なんだか懐かしい)
そういって、受話器を置いた大きな手は私の頬や髪を撫でている
というか、膝に私をはさんでいつものように背後にピタッとくっついている、とても恥ずかしいので止めていただきたいけどこんなに私を甘やかしてくると邪険にできない
私はどうすることもできずにひたすらルームサービスが来るのを待つばかりだ
彼はくるくると私の髪を指に絡めたり内側から手櫛をしたりその感触を楽しんでいるようで、ちょっと遊んでは匂いを嗅ぐのを繰り返している
(ふわっふわのオムレツ、つやつやご飯…)
とてもくすぐったいので変に反応しないようにさっき注文した朝食のことを考えていると、自然と口元が緩んでよだれが垂れそうになる
あわててそれを吸い上げるけど、彼はめざとい、本当にちょっとだけ口元にはみ出したよだれを舐める
「!」
(ヤバいっ…)
彼の目の色が変わる、
ちょっとギラッとしだしてこっちを一瞥するとそのまま首から肩にかけて舌を這わせる
そのままだんだん胸の方にまで遠慮なく舌は下りていく