バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
きっと彼女がその事実を知ってしまえば、優しい彼女は俺の自由を奪うことを拒否するだろう
だから、今は彼女の混乱に乗じて真実を明かさないまま進める
動揺した彼女の手は恐怖におののいているが、俺の心臓を落とすまいと優しくでもしっかりと両手で握っている
傷付いた彼女の掌から俺の心臓は嬉々として血を吸っている
まるで彼女の掌で俺と彼女の血が混ざりお互いの身体の中へ侵食していくようだ
彼女を安心させようと、その両手を包み込み柔らかく低いトーンで語りかける
「そうだ、そのまま落とさないようにしっかり握っていて」
手の中の彼女はぶるぶる震えているけど、瞳は俺を生かそうと必死だ
「はやくっ、はやくっ!!」
涙声で俺を急かす、きっと彼女の美しい掌に俺の命がかかっていると思っている
「そんなに急がなくても大丈夫だ、俺たちは人間よりずっと丈夫だ」
それまで心臓に釘付けだった彼女の瞳が俺を捕らえる
「ほんと…?」
少し色味を取り戻した声で聞いてくる
「あぁ、だからこのまま戻してくれるか?」
彼女の瞳が強い意思を持ち始めた、俺を救おうと決意している
初めて会ったとき、生きる決意をした瞳に似ている
どんなに動揺しても生きる希望さえ失いかけても、
土壇場では強く自分がすべきことを見失わない彼女は美しい