バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー



(珍しい…)

私が目を覚ますと彼は必ず起きていた

だけど今は私を抱き締めたまま静かに眠っている

そのさらさらの黒髪に優しく触れて、掬い上げて指を少しづつ離せば髪がはらはらと黒いフレームの上へ落ちていく

眼鏡をかけたまま眠ってしまうのはあの人の癖だ

こうやって眠るから家専用の眼鏡はフレームが少し歪んでいた
寝るあの人を見つけるたびにそっと眼鏡を外していたのでいつものように静かにフレームに手をかける

彼から眼鏡を引き抜こうとしたところであの人が目を覚ます

私と目があったレンズ越しの瞳は一瞬揺れる

彼らはきっと分かっているんだ、私がとても怒っていることを

手を引っ込めた私を追うように上体を起こしてこちらへ右手を伸ばそうとしている

「あなたが何でこんなことをしちゃったのか分かってる」


(もう十年以上も一緒にいたんだもん)

あの人の手がピタッと止まる

「ずっと私のそばにいたかったんでしょ?」
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