バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
二年前と同じように女が眠っている間に買い出しに出る

目覚めたら確実に貧血であろう彼女のためにサプリメントと食材、それに最近彼女が好きなヨーグルトを買う

レジに向かう途中でシール付きのウエハースチョコを見かけたので一緒に二つカゴの中へ

ちゃんと喧嘩しないように二つ買う

(いや、一つでも争うことはないだろうな)

きっと兄はウエハースを半分にして弟に渡すだろう、そして一枚しかないシールを確認して名残惜しそうに、でもちゃんと弟に与えるだろう
弟はそれを笑顔で受け取って礼を言うだろう、でもやっぱりそのあとシールを確認して

「やっぱにいちゃんにあげるっ」

きっとそのあとは二人でそのシールをどうするか相談するのだ

簡単に想像できてしまって顔がゆるむ

二年前もワクワクしながら買い物をしていたが今じゃあの頃に考えつかないようなことさえ想像できてしまってもっと楽しい

帰ってテーブルに食料を置き、ウエハースはパントリーのお菓子置き場へ

本当はこんな出来合いのものではなくちゃんと料理したものを与えたいが、俺はあいにくお粥しかまだ作ったことはない

風呂と浴室暖房のタイマーをセットする
今度は途中で浴室暖房が切れて風呂を暖めるだけで済むように、入っている間はちゃんと切れているように注意する

脱衣場を出たところで、洗濯機に昨夜から洗濯物が入ったままなのを思い出す

彼女はよく洗濯機をかけたまま寝落ちしてしまったり、忘れたままベッドに入ることもある
そんな時は人型に戻って洗濯物を干しておく

彼女の前で獣型ではなく人型でいられればこんなコソコソしなくても、もっと色々手伝えるし料理だって堂々と練習できるのになと思う

ベッドルームに戻って彼女の閉じられた美しい寝顔を見る

このまま昨日をなかったことにすることもできる、でも女の前にヴァンパイアとして立って側にいたい
思い切り両手で抱き締めたい、雄として彼女を悦ばせたい

(本当の俺を受け入れるだろうか…?)

(また、拒絶されたら…?)

俺が女の前に俺として現れても彼女が逃げられないようにする方法はないだろうか

でも、それは首輪をかけて重く冷たい金属の鎖をつけるんじゃなくて、女と子供達が俺に見えない鎖をつけているように

できれば、真綿で編んだような、優しくて脆いのに逆にそれを千切ることなんてできずに自分から甘んじて受け入れる方法はないだろうか

そんなありもしない方法を頭のなかでグルグル探すが、いい方法なんて思い付かない

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