バッドテイストーヴァンパイアの誤算ー
「今日は呼んでませんけど」
私にお構いなしに両手を腰に回して首元の匂いを嗅ぎながら背中にピタリとくっついてくる
それまで身体に入っていた力が自然と抜けていく
「遅いから迎えにきた、夜道は危ない」
(あなたが一番危ないと思うけど…)
いつもなら子供達をベッドに寝かしつけているころで普段なら出歩かない時間だけど、いい大人が出歩く分には問題ない時間だ
まるでいつもの私の生活を知っているような過保護さだ
「まだ9時前ですよ、大人なんだからなんなら今からが本番の時間ですよ」
「そうか…」
そう言うと、男は助手席のドアを開けて私を促す
「えっ、運転できるんですか?」
「問題ない」
質問を間違えたかもしれない、運転できるかではなく免許証をもっているか聞くべきだったかも、でも彼ならしらっと持っていそうな気もする
とにかく、今時のヴァンパイアは人間の社会によく溶け込んでいるようだ
彼は優雅に車を滑らせるように運転する、彼がハンドルを握れば小さな街乗り車があっという間に高級車に見える
ただ、小さな車に彼の長い足は窮屈だ
だけどその狭い空間のお陰で彼は空いた方の手で私の耳を撫でている
まるでもっと触りたいのをしょうがないからこれで我慢しているみたいだ
赤信号で車を停めると、手は頭に回される
いつもみたいにキスをされるかと思って身構えてしまう
彼はおでこに鼻を近づけてすんっと匂いをかいだかと思うと、
「くさい…」
「!!」
二重の意味で恥ずかしい、わなわなと彼を見上げると今度は本当にキスしてきた
どんどんっと肩を叩いて青信号を知らせる
匂いをかいだ時は少しイラっとした感じだったけど、フッと満足気に笑って車を進める
(相変わらず意味わかんないな)
今度は私のポケットのスマホを取り出していくつも目があるかのようにとても器用にスマホをいじりつつ運転をする
(スマホ使えるんかい!というか、ながら運転ダメ絶対!)
注意しようとスマホに手をかけるとまた赤信号で止まって、キスをしてくるので本当に器用であきれてしまう
彼はそのまま私のポケットにスマホを戻すと自分も運転に戻る
こんな調子で彼が運転しながら私の耳をいじったり遊んでいるのでしばらく気付かなかったが、高速道路に乗ろうとしているようだ
「ロキが待っているので帰ります」
迎えに来たといっていたから当然家に帰るものだと思っていたので油断していた
「今夜はいないから安心しろ」
(なんでそんなことわかるの?)
ふと疑問がわいたが彼がいるときは子供部屋にいたはずのロキは自分から姿を消しているのでその通りの気がした
「今からが本番なんだろ?」
ちょっと楽しそうな彼が怖いー