《短編》ガラクタ。
「…アラタさん、は…?」


「今のところ、助かったとだけ言っておきます。
ただ、意識が戻らない場合や、今後容体が急変する可能性もあり、予断は許さない状況です。」


日本語なのかどうなのか、それすらわかんなかった。


ただ、その言葉を噛み砕くより先に、中からキャスターに乗ったアラタが看護師の手によって運ばれていく。


包帯グルグルって感じで、あたし以外に見せてんじゃねぇよ、って思ったけど、でも、ショックで何も言えないまま。


つまりはまだ、アラタが生死の境を彷徨っているって現実は、何の変化もないってことだ。



「起きろよ、馬鹿男!」


「マイさん!!」


「殴るから起きろって言ってんじゃん!!」


声を荒げればやっぱりみんなに制止され、あたしに触んな、って思いながら唇を噛み締めた。


あたしが抱いて欲しい時、アンタは抱いてくれんでしょ、って。


じゃあ起きて、今すぐあたしのこと抱けよ、って思ったけど、一瞬触れた彼の体はあまりにも冷たくて、ただ怖くなったんだ。


ナウシカ観るって約束破って、電話もしなくて、そんなあたしのことを怒って欲しかったし、何かあったのかって心配して欲しかった。


まだ知らないこといっぱいあるし、何よりちゃんとした告白だって聞いてなかったのに。


好きとか、そんな言葉すらぶっ飛ばしてんじゃねぇよ、って。



「…死なないでよっ…」


結局、言えたのはそれだけ。


自分の力じゃ到底歩くことすら出来なくて、半分支えられるようにして病室まで辿り着いた。


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