《短編》ガラクタ。
「マイさん!!」


「アンタ、アイツが死ぬとか言いたいの?!
何で泣くのよ、死んで欲しいの?!」


多分、支離滅裂だったのだろう、あたしはコージくんとモッシュくんによって、無理やりに引き剥がされた。


その瞬間にサブの服についているスタッズに爪が引っ掛かり、折れるようにそれは宙を舞う。


ただ肩で息をすることしか出来なくて、怒りばかりで涙も溢れない。


これが現実だとするならば、あたしを残して死のうだなんて、そんなアラタなんか許せるはずがないんだ。


アイツしかあたしの怒りを鎮められないし、アイツ以外のセックスなんていらないんだから。


折れた爪のままに拳を握り締め、壁へと叩きつけてみれば、ゴッと鈍い音が廊下に響いた。


あたしが悪いんだったら今なら謝ってやるし、別に鳳凰なんか居なくたってアラタが居ればそれで良いのに。


そんなことを思ってる自分に気が付いた時には、悔しさの中でただ涙が溢れていた。



「…何で、こんなこと…」


「大丈夫っす。
アラタさんはマイさんや俺ら残して死んだりしませんって!」


気休めにもならないような、コージくんの言葉。


だってあたしはアイツにとって何でもないんだし、死にたいと思って飛び降りたヤツがそんなこと考えたりなんてしないんだから。


アラタが珍しく褒めてくれたネイルなんてボロボロで、服もダサいし髪の毛もグチャグチャなあたしなんか、必要ないんだ。


ただ泣き崩れることしか出来なくて、一体どれくらい自己嫌悪の中に居たのだろう、気付けば“手術中”と灯されていた電気が消え、そして中から血まみれの服を着た医者っぽい男が出てきた。


テレビとか滅多に観ないけど、でも、まるでそんな中に居る気分。


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