《短編》ガラクタ。
「そうだよ。
見たら全部欲しくなっちゃうし、誰にも譲りたくなくなるから。」


「良いね、お前。
さすがは俺が惚れた女だ。」


「…何それ?」


「俺はお前のその、異常なまでの独占欲と性欲が好きなんだから。」


「へぇ、初めて聞いた。
けど、性欲強いのはアンタじゃん?」


煙草を取られてしまい、手持ち無沙汰のままに仕方なく絡まってきたアラタの首の後ろへと腕を回せば、彼は満足げな様子で唇を触れさせた。


最近お互い忙しくてなかなか会えなかったし、あんなヤバい絵を見せられたら、正直理性なんて欠片も残らない。



「お前のための絵ならいくらでも描いてやるから、昔の絵なんか全部くれてやれよ。」


「やだよ、全部あたしの。」


「ハッ、困ったヤツだ。」


困ったヤツなのはアンタじゃん、って思ったけど、でも、首筋に掛かる吐息ひとつに反応してるあたしが言える台詞でもない。


こんなところでサカってるあたし達なんて結局は脳みそサルのままだし、色んな意味でぶっ飛びそうだ。



「ねぇ、今すぐちょうだい。」


「ダメ、人が来る。」


「良いよ、別に。」


「馬鹿。
俺が見せたくねぇんだって。」


ここまでしといてお預けかよと、あたしはあからさまに不貞腐れた顔を向けた。


“あとから時間作るから”と、そう吐息混じりに耳元に落とした彼は、お終い、って感じで体を離してしまう。


つまんなくて壁へと体を預けあたしは、取られた煙草をむしるように取り返した。


コイツは本当に自殺未遂なんかした男だとは思えないし、不健康のくせに何で脅威の回復力なんだよ、って。


もちろん、色んな意味でだけど。


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