Perverse
電車が動く度に人に押される柴垣くんの背中。



いつの間にか柴垣くんは前腕を付いていて、私たちの距離は…あの時と同じになった。



あのホテルの部屋での…あの距離に。



あの時のことを思い出しただけで、異常な程に早くなる脈拍を抑えることは無理なようだ。



でもそれも仕方の無いこと。



視線を合わせて向かい合えば、あの時みたいにキスできる距離なのだから。



それで胸が高鳴らない方がおかしい。



そっと視線だけを上げてみると、柴垣くんは私なんて見てなくて。



私の後ろの車窓から、過ぎ行く町並みを眺めているようだった。



それがとても寂しくて。



身勝手ながら視線が合わないことが、どうしても我慢出来なくて。



私は無意識に柴垣くんの腕に触れてしまった。



私がリセットなんて馬鹿な提案をしなければ。



もう少し自然にこの腕に触れられたんだろうか。



なかったことになんて出来るはずもないのだから、いっその事…手放さなければよかった。
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