Perverse
今までだって何度も津田さんからの電話はあった。



けれどそれは上司の立場としての電話がほとんどで、男性としての電話は記憶にないくらいだ。



『もしかしてまだ…柴垣と一緒にいたりする?』



「あ…はい…」



私がそう言うと、津田さんは小さく息を吐いた。



『やっぱり…か。…ごめん、俺、最低だ』



津田さんは後悔が伝わってくる声色でそう呟く。



『そうかもしれないって思ってた。でも確認するような真似してしまった。本当にごめん』



電話越しでも津田さんの頭を下げた姿が容易に想像できて、私は焦って「大丈夫だから」と伝えた。



『柴垣と一緒にいるかもしれないって思ったら、どうしても三崎さんの声が聞きたくなった。俺もいるんだって。柴垣じゃなくて俺も三崎さんを守って支えてやれるって言いたくて。そんなの三崎さんからすれば迷惑なことなのかもしれないのにね』



「…津田さん…」



せっかく津田さんが気持ちを言葉にしてくれているというのに。



私は目の前の柴垣くんがこんなに好きで。



どうしても津田さんに応えられない。



本当に最低なのは誰でもない。



この私なんだ。



今でも、こんな時でも、この状況でも。



柴垣くんに聞かれたくない。



そんな思いばかりが何度も頭を過ぎるのだから。



そっとその場を離れようとした時。



柴垣くんは手を掴んでそれを引き止めた。
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