Perverse
「津田さん、おはようございます」



昨夜言われたように、私は笑顔で挨拶する。



「おはよう三崎さん」



いつもと何ら変わらない爽やかな笑顔で、津田さんは挨拶を返してくれた。



「朝から申し訳ないんだけど、ちょっといいかな?」



「あ、はい」



席を立った津田さんの後ろをついて行くと小会議室へと向った。



促されて中へと入ると、津田さんは真剣な表情で私を見つめた。



「ごめんね、こんなところに連れてきて」



「いえ。私も改めてお礼を言いたかったので良かったです」



「お礼を言われるようなことはしていないよ。それよりも大事な話をしていいかな?」



「…はい」



二つの椅子を引いて向き合って座ると、津田さんの柔らかな雰囲気が一変した。



「昨日の事態の原因なんだけど。僕が動けば追求することも出来るし、公にすることも出来る。今回は柴垣が早く気付いて知らせてくれたから対処のしようもあったけど、そうじゃなかったら三崎さんは一型落としてたわけだからね」



私があの一型を落とせば、ざっと計算して50万ほどの損害だった。



会社全体からすれば私が落とした分のフリー在庫を誰かが売ってしまえば問題ないのかもしれないが、得意先はそうはいかなかったのだから。



「どんな理由があるにせよ、こんな事を簡単に許せるものでもないだろ?」



津田さんも柴垣くんも。



そう言ってくれるなんて本当に有難い。



「昨夜、柴垣くんにも同じようなことを言われました」



「柴垣が…」



「『俺ならなんとか出来る』って。柴垣くんと津田さんの気持ちは有難いですけど、これは私が解決しなくてはいけない事だと思います。特定でき次第、私がちゃんと動きますから…」



津田さんは暫く考えているふうだったが、



「わかったよ」



と長い長い溜息と同時に呟いた。
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