Perverse
デスクに戻ると、昼から商談が入っていた柴垣くんが戻っていた。



今日は午後から営業会議や商談などが重なってる為か、柴垣くんや津田さんを含めた営業数人は在社している。



特別珍しいことでもないけれど、今日は隣にいる柴垣くんが勇気をくれるような気がして心強い。



「何か大口商談でもまとめんの?」



柴垣くんは頬杖をついて私をじっと見た。



「ううん何も。今日は私、商談入ってないから」



「その割になんか、気合入ってるみたいだけど」



「津田さんと同じ事言ってる」



思わずクスッと笑ったら、



「そ」



素っ気なく柴垣くんは自分のパソコンに向かってしまった。



「…津田さんと一緒って…なんだよ」



小さな小さな独り言が耳に入って来て、なんだか胸がこそばゆい。



「ねぇ」



「……」



「ねぇってば」



「…んだよ」



ぶっきらぼうな返事だけれど怒ってはいないようだ。



というか……拗ねてる?



津田さんを追い越すと言っていた柴垣くんに、津田さんと一緒だと言ったのはまずかったか。



「あのね?私、もうすぐ大きな事に決着をつけなきゃいけないの。だから…手、出して?」



「はぁ?」



「いいから手っ」



強引に手を掴むと、きゅっと握手の様にして握った。



「ちょっ!何してんのお前っ」



私らしくない行動に大きく動揺しているけれど振り払わない柴垣くんの優しさに甘えて、私はたくさんの勇気を充電させてもらった。



「私がこんなことできるの、柴垣くんだけなんだもん。これできっと上手くいく」



手を離してにっこり笑うと、柴垣くんは呆気に取られたように固まっている。



「ありがと」



全く意味がわからないであろう柴垣くんに一言そう言うと、鼻歌でも歌いたくなる気分で仕事に戻った。
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