Perverse
早く取らなきゃ切れてしまう。



わかっているのに手が震えてうまくスライドできない。



何度かスライドさせると、ようやく通話中に表示が切り替わった。



「…もし…もし?」



こちら側と向こう側を繋ぐ音が聞こえ。



『もしもしっ!?』



ひどく慌てた声の主が私の全身を痺れさせた。



『お前まだ帰ってねぇよなっ!?』



「うんっ。まだっ!」



いつもよりも大きく焦りを隠そうともしない声に、私もつられて声が大きくなる。



『絶対に帰るなよっ!』



「え、でも…」



『いいからっ!絶対行くんじゃねぇぞっ!』



「はいっ!」



そう返事はしたものの、行くんじゃないって…何処へ?



そう思って聞き返そうとしたけれど、スマホから聞こえてくるのは、通話終了後の機械音だけ。



「切れてるし」



声の主は半ギレしながら、そうとう慌てているようだった。



意味がよくわからない部分もあったけれど。



確実にわかっていることがひとつだけ。



ここにいれば電話の主…柴垣くんに会えるんだ。



私が勇気を出す前に神様が手助けしてくれたよう。



そう考えれば大きな力になる気がした。
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