Perverse
思わず壁にかかった時計を見上げると、18時半前。



もう帰ってきたの?



柴垣くんから日に2回も電話がかかってきたことなんて一度もなくて。



高揚と不思議が交じる気持ちで通話をスライドすると。



『三崎っ!お前、行くなって言ったろーがっ!』



「ひゃっ」



耳に当てた途端に柴垣くんの大声が響いて、思わず小さく叫んでしまった。



『何処にいる?すぐ行くからっ』



どうして彼はこんなに焦っているんだろうか。



彼は私に何処に行くなと言っているのだろう。



頭の中は疑問符だらけだけれど、いまだ電話口で居場所を尋ねる彼に私が伝えることはひとつ。



「帰ってないし行ってないっ。リラクゼーションルームにいるからっ」



早口でそう告げると、柴垣くんはピタリと言葉を止めて。



『すぐ行くっ』



そう言って電話を切った。



自分の中で組み立てていた流れと正反対に起こりうる不思議な現象に、私は何一つ追いついていない。



今日、私はちゃんと柴垣くんの気持ちを伝えることが出来るのだろうか?



そんな不安がこみ上げてきたとき。



階段の方から足音が聞こえだし、それが大きくなったかと思うと、扉が大きく開かれた音がした。



もしかしてと振り返ると、観葉植物の間からズカズカと入ってきたのは。



間違いなく柴垣くんだった。
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