Perverse
あんなにも遠回りをしたのに、想いを伝えあってすれ違っていた時の答え合わせをすれば、こんなにも人の心は近くなるのか。



初めてそれがわかって、私も少しわがままを言ってみる。



「それをいうなら、私の方が心配だよ。楓や沙耶ちゃんが言ってたけど、柴垣くんって社内にファンクラブがあるの知ってる?」



顔も良くて営業成績もトップで浮いた話のない独身社員。



人気があるに決まってる。



「ああ。こっち帰って来たばかりの時にそんなの作られたらしいな。でもあれ、すぐに消えたぞ」



「どうして?」



「竹下が潰した」



「……そう」



私と同じように、柴垣くんと竹下さんが付き合ってるって信じてる社員は、きっと今でもいるだろう。



そう思うと何だか心がモヤモヤしてしまう。



ターゲットを変えたのでもういいと竹下さんは言っていたけれど、他の社員は『柴垣&竹下』というカップリングが出来上がっているかと思うと、心中穏やかじゃないのだ。



「遅刻しちゃう。急ごう」



今度は私が引っ張るように柴垣くんの前を速足で歩き出した。



「おいっ。手……」



今度は柴垣くんが焦る番だ。



「うちの会社は社内恋愛禁止じゃないでしょ?」



柴垣くんの言葉を繰り返すと、柴垣くんはふっと笑う。



「推奨企業だ」



彼がそう言うと、私達は駅を出てしばらくは手を繋いでいた。
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