Perverse
私の声など届かなかったかのように、柴垣くんは手を繋いだまま歩き改札を抜けた。



「ねぇってば」



本当にそろそろまずいと思い手を引くと、柴垣くんは歩調を少し緩め、不満そうな表情でこちらを見下ろした。



「さっきからずっと気にしてるけど、それはそんなに重要なことなのか?」



「え?」



私が聞き返すと、柴垣くんはわざとのように繋いだ手を私の目線まで持ち上げる。



「これ。なんでそんなに焦って離さないといけねぇの?」



怒っているというよりも、これは拗ねていると瞬時に悟ることができたあたり、彼女になったのかな、と実感できてくすぐったかった。



「うちの会社、社内恋愛禁止じゃねぇだろ。社長の奥さんだって元社員だっていうし、むしろ社内恋愛推奨企業じゃん」



いや、それは違うと思うんだけど。



「ぶっちゃけて言うと、いっそのことこのまま会社のフロアまで行って、でけぇ声で俺の彼女宣言してぇとこなんだよ」



いやいや、なにを飛んだ話をしてるんだろう、この方は。



「けどさすがにそれはできねぇってわかってるから、ギリギリまでは繋いどきてぇの。わかる?」



もう本当にこの人ってば、昨日からどうしちゃったの?



「……わかる」



こんなに真っ直ぐ想いを口に出されたら、駄目だなんて言えるはずがない。
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