Perverse
会議室から出てフロアに戻ると、始業時間が過ぎていたこともあり、私達には一斉に好奇の目が向けられた。



憐みの視線を受けながら、私は柴垣くんの隣の席に座った。



対する柴垣くんに向けられているのは、どちらかと言えばやはり敵意の方が多いような気がする。



小さな舌打ちや溜め息が聞こえるが、特別誰が何を言ってくるわけでもないので、こちらから行動を起こすわけにもいかないのだ。



かなり居心地は悪いが、他人に誤解されないために説明をしなければいけない権利も義務もない。



会社だけの付き合いである人間にプライベートを曝す必要はないのだから。



楓と沙耶ちゃんが心配そうに私を見ているが、この二人には分かっているはずだ。



この噂がただの噂で、事実ではないということが。



私はこっそりスマホを手にすると、三人でグループ登録しているメッセージアプリを開き、二人に宛てて短くメッセージを送った。



『柴垣くんと付き合うことになった。噂は噂で心配ないから。詳しくは後でちゃんと話すね』



瞬時に既読になり、メッセージを確認してくれた二人は私に笑顔を向けてくれた。



それにしても、この得体の知れない空気の中、仕事とはいえ二人で並んで座っているのは辛いものがある。



遠巻きに見られ、まるで見世物小屋にでもいるかのようだ。



わかってはいたものの、針の筵であるこの場から逃げ出したくなった。
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