Perverse
チラリと柴垣くんの様子を伺うと、彼は私よりもっと居心地が悪そうだ。



違うフロアや違う島の人たちが、何かと理由を付けてはこちらにやってきては、私達に視線を向ける。



「柴垣。今日は十一時から打ち合わせだから準備しといて。かなり大きなお得意さんになりそうだから、柴垣に任せるよ」



津田さんが少し大きな声でそう言うと、柴垣くんは表情を締めて「わかりました」と返事を返す。



その遣り取りを聞いていた男性社員が、『ハッ』と鼻で笑ったのが聞こえた。



「仕事もプライベートも順調で何よりだな。今日の得意先の担当者も女なんじゃねぇの?」



小さな小さな一言。



それでも私の耳にはハッキリと届いた。



私が憐みの目で見られるのなんて構わない。



柴垣くんだって、いい気はしないだろうが、自分が悪く言われることなんて痛くも痒くもないだろう。




しかし今の言葉は。



それだけは許せるものじゃない。



気が付けば私はゆらりと椅子から立ち上がっていた。



「何も知らない人に、どうしてそんなことを言われなきゃいけないの……?」



「……三崎……?」



柴垣くんの驚いたような声が聞こえたけれど、それだけでは私を止めることはできなかった。
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