Perverse
「出社してからずっと見られてるんですよ。何かと思えば私が柴垣さんから二股掛けられてるって。冗談じゃないっ!」



叫ぶように言い放つと、竹下さんは私にグイっと詰め寄った。



「私は今まで、人の男を取ったことはあっても、取られたことはないんです」



凄いカミングアウトだが、私の頭は真っ白になっていた。



竹下さんが柴垣くんのことを『もういい』と言ったのは昨日のことだったのに。



本当は付き合っていなかったと知ったのも昨日のことだったのに。



私は今どうしてこんなに竹下さんから責められてるんだろうか。



「竹下!三崎は関係ない。全部俺が悪いんだ」



「そうです。全部、柴垣さんが悪いんですよ」



私達の社内での修羅場を、外野がニヤニヤしながら見物している。



典型的な三角関係の男女の醜態だ。



それをこんな形で晒すことになるなんて思ってもみなかった。



私の抱えてきた黒い感情が再び爆発しそうになったとき、竹下さんが思いがけないことを言い出した。



「柴垣さんが後先考えずに行動しちゃうから、私が『彼氏から浮気された可哀想な女』って設定になっちゃったじゃないですか。すっごく迷惑なんですけど」



「設定……?」



初めて聞くワードに、私は思わず聞き返した。



「そうです。全部、設定だったんですっ」



フンと鼻を鳴らしながら、竹下さんは目を丸くしている周囲をグルリと見渡して溜め息をついた。
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