Perverse
チラリと柴垣くんを見ると、私の考えがわかったのか。



「津田さん、すげぇな」



と小さな声で一言呟いた。



「ことが落ち着いたら別れたって噂を流すつもりだったのに、その前にこんなことになっちゃって。おかげで『可哀想な女』『哀れな女』って目で見られる羽目になっちゃったじゃないですかっ」



「それは迷惑な話だね」



「本当です。人の恋愛なんてほっとけよ、って初めて思いました」



「無関係な人間は下世話な噂話が好きだからね。面白くて放っておけないもんなんだよ」



「関わることもできないのに、どうして遠巻きで楽しんでるんでしょうね。本当に鬱陶しいんですけど」



竹下さんは私のデスクに寄りかかり、敢えて全体が見えるようにして腕を組む。



「人の不幸は蜜の味っていうからね。俺はそんな蜜を楽しむことだけはしたくないかな」



「さすが津田さんです。イイ男はこうでなくちゃ」



どうやら津田さんと竹下さんは、外野に向けて私が言えない言葉を代弁してくれているようだ。



次第に周りの雰囲気が変わりだし、トゲトゲしかった針のような視線から解放され始める。



これで自然と好奇の和が崩れ、元に戻るだろう。



二人に感謝しながらホッと胸を撫で下ろした瞬間。



「義人っ!」



思わぬところから思わぬ人の焦った声がフロアに響いた。
< 262 / 290 >

この作品をシェア

pagetop